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専門は地域組織経営論、戦略論、マーケティング。マーケティング会社にて商品開発・市場開発などを経験。人口減少社会の事業モデルや地域のマーケティングが現在のテーマ。特に地域の中小企業やNPOの戦略策定に関する研究や研修を多数手がけている。

第20回 【環境】「どうなるべきか?」(10) 市場の変化をとらえる

自社の環境に関する「どうなるべきか?」という問いは、シニア向けの商品やサービスの顧客は誰か、その顧客は何を求めているのかという問いと同意です。この問いに答えるためには、生活者の価値観の変化に対してアンテナを広げなくてはなりません。日々、皆さんが接する情報や現象を「価値観の変化」、言わば「良いことや悪いことの評価基準の変化」という視点から解釈していく必要があるということを前回お伝えしました。

また、これはマクロ的な視点からのアプローチで、社会や時代の変化からシニアをとらえようという試みであり、ミクロ的な視点からのアプローチである「ライフダイビング」とともに必要な作業となります。

さらに、もうひとつの視点として、「市場の変化」から考えるというアプローチもあります。社会や時代という視点は、あまりにも広く、なかなかとらえきれないフィールドでありますが、「市場」であれば、皆さんが常に接している「ビジネス=戦いのフィールド」ですから、マクロ的な視点からアプローチであっても考えやすいかもしれません。

ところが、この「市場」というのは、実はやっかいな概念です。もともと「市場」は経済学でいえば、取引の場や取引そのものをさしますが、マーケティングにおいては、「産業」「業種」「業界」といったマーケティングの主体側の線引きに関する概念であると同時に、「ある特徴を持った顧客の集合」というマーケティングの対象側の線引きに関する概念でもあります。

前者の視点は、自社を「○○業」や「○○業界」という形で線引きをすることで、自社が戦うフィールドを定め、競合相手がどこになるかを明確にします。また、この線引きは、その戦いのフィールド特有のルールや慣習を共有する企業の集合ともいえ、そのルールがあることで、他の業界では得られない利益を得たり、逆に行動を制約されたりすることになります。

後者の視点では、この戦いのフィールドに対応した形で顧客が存在するということになります。自動車業界であれば、自動車ユーザーという大枠があり、それが軽自動車市場やミニバン市場といった形で細分化されていくと考えられてきました。企業が提供する商品のジャンルに顧客のニーズが対応しており、まるで、このニーズによって理路整然と人間が線引きされて存在するように設定されていますが、本当にそうでしょうか。

よく言われることですが、使う金額から考えた時、自動車という商品の競合が、同じ自動車となるとは限りません。同じ100万円を使うなら、自動車ではなく、豪華な海外旅行に行くからもしれませんし、高価なデジタル家電を購入するかもしれません。場合によっては、子どもの学校の入学金になるかもしれません。このようにちょっと顧客の視点からとらえなおしても、その戦いのフィールドというのは、あくまでもマーケティングの主体である企業側の論理によって設定されたものだということがわかります。

また、この講座でも繰り返し述べてきたとおり、「モード」という人間観に立てば、生活者をひとつのニーズや、ある商品の利用の有無によって、線引きすること自体、現実的ではありません。

個人のなかの多様性を考えると、生活者が、ある企業やある業界の顧客であるというのは「瞬間的」なものです。企業は、この顧客側からすれば、「瞬間」でしかないものを集めて、まるで、自分たちのファンクラブが設立されているものだと勘違いしてしまっている場合があります。戦いのフィールド=市場は、企業が考える以上に、その境界線は曖昧で、まとまりのない、とらえどころがないものといえるでしょう。

このように、「市場」というのが、企業側の論理で線引きされたものであることをよく理解したうえで、今、自社の業界にどのような変化が起こっているかを探ることは有効です。社会や時代という大きな枠組みにおける変化を、ビジネスというフィールドにおける変化により具体化して考えることで、生活者の価値観の変化にせまっていくことができ、自社の「どうなるべきか?」を考える機会となるはずです。

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