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専門は地域組織経営論、戦略論、マーケティング。マーケティング会社にて商品開発・市場開発などを経験。人口減少社会の事業モデルや地域のマーケティングが現在のテーマ。特に地域の中小企業やNPOの戦略策定に関する研究や研修を多数手がけている。

第22回 【環境】「どうなるべきか?」(12) 自社に影響を与える変化②

自社の「どうなるべきか?」をプロジェクトチームで検討する場合の具体的な方法として、前回から「戦略の構図2」を使用したプロセスを解説しています。
このプロセスは、自社に影響を与える変化をとらえることで、商品や事業の顧客と「戦いのフィールド」を設定することを意味します。
1.自社を取り巻くプレイヤーの設定、2.マクロ環境の変化の検討、3.今後のプレイヤーに起こる変化、4.戦いのフィールドの設定という手順のうち、今回は、後半の3と4を解説します。

3.今後のプレイヤーに起こる変化
「1.自社を取り巻くプレイヤーの設定」でピックアップした自社のビジネスという「舞台」の「登場人物」たちに、今後3年間という期間のなかで、どのような変化が起こるかという予測をします。

この場合の「3年」も、前回で述べたように、厳密に3年間という時間を指すのではなく、中期的な時間軸という設定です。このときの変化を予測する場合、「2.マクロ環境の変化の検討」で分析したものを参考します。マクロ環境の変化が、それぞれのプレイヤーにどのような影響を与えるかを考えます。②顧客であれば、ライフスタイルの変化からニーズの変化を見出したり、③競合であれば、経済の変化で、グローバルな競争にさらされるという予測をたてたり、⑤新規参入・代替品であれば、法律の改正、技術の進歩によって、どのような業界のどういった企業が新たに参入しているかを考えたりすることになります。

ここでも、最も大事なことは、顧客の変化、つまり、顧客の価値観の変化をとらえることです。この顧客の変化に対して、それぞれのプレイヤーがどのように対応していくのかというのが、それぞれの変化を予測したあとに、さらに深く分析する上での視点になります。そうすることで、自社が「戦うフィールド」をどこに設定するかが決まってくるのです。

4.戦いのフィールドの設定
「戦いのフィールド」とは、第20回で考察した「市場」のことです。企業が自分たちの戦場をどのように線引きするかというマーケティングの主体側の意識や姿勢を反映させたもので、既存の業界やユーザーという視点で定義してはいけません。

この概念は、いわゆる「ドメイン」というものに近い考え方です。ドメインは、組織が存在し、活動する領域を定義するもので、定義の仕方は大きく分けて2つあります。例えば、トヨタが自社のドメインを「自動車」とすれば、これはドメインの物理的定義となりますが、もし「輸送」とすれば、これはドメインの機能的定義となります。

このドメイン定義の意義は、マーケティングでは有名な話ですが、アメリカの鉄道会社の事例が引き合いに出されます。アメリカの鉄道会社は、巨大企業の代表でしたが、今や見る影もないのは、ドメインの転換に失敗したからだというものです。彼らは、社会において人やモノの輸送のニーズが高まり、自動車という新しいテクノロジーが普及するなかで、自分たちをあくまでも「鉄道会社」としてみることしかできなかったと言われています。もし、自分たちのやっていることが「輸送」だと定義することができていれば、機関車や2本のレールという存在にとらわれることなく、自動車などの新しいテクノロジーをうまくとりこみながら、新たな価値を提供することができたはずです。

これは、ドメインを商品などの物理的で目に見えるものだけにとらわれず、機能的側面から考えるということですが、もっといえば、自社が提供している価値という側面から考えるということでもあります。トヨタのドメインは、広い意味で自動車を通じた「輸送」なのかもしれませんが、さらに顧客の側から考えれば、例えば「安全な移動」という価値を提供していることにもなります。私たちの考える「戦いのフィールド」の定義は、顧客が求めている、または顧客に提供される価値の側面から、行われなければなりません。

「戦略の構図2」の⑩戦いのフィールドには、まず「現在のフィールド」として、自社が一般的に今まで言ってきた業界やユーザーを書いてみましょう。その上で、顧客側の視点にたって、自分たちの市場を再定義してみてください。自社は、顧客に対して、どのような価値をこれから提供していこうとしているのだろうか。自動車メーカーが、自社の戦いのフィールドを「自動車業界」ではなく、「安全な移動」という価値の領域に設定したとき、競合は、「移動」という価値を提供する飛行機、船、鉄道、自転車まで視野に入ってくることになりますし、人にとって大切なものの移動であれば、データの移動という情報通信分野ですら、自社の「戦いのフィールド」に含まれてくるかもしれません。

このように、自社のビジネスを顧客が得る価値という側面からとらえなおすことは、シンプルストラテジーにおいては「どうなれるか?」の検討にもつながります。最終的には、この「どうなるべきか?」という環境条件で検討した「顧客」と「戦いのフィールド」は、自社の強みや弱みといった自社の能力の検討を経て、さらに明確に定義されることになります。

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